ゲーム産業の転換点 AI技術の浸透と人気ストラテジーの「40K」進出説
世界市場規模が30兆円に迫るとも試算されるゲーム産業。クリエイターの独創性と技術力が牽引してきたこの市場において、今、大きなパラダイムシフトが起きている。開発現場における「AI(人工知能)」の活用、そして長寿シリーズの劇的な方向転換など、業界は新たなフェーズを迎えようとしている。9月に開催された「東京ゲームショウ」で見えたトレンドと、海外で浮上している人気ストラテジーゲームの大型リーク情報から、業界の現在地を探った。
過去最多の出展数を記録した東京ゲームショウ
9月26日、千葉・幕張メッセで開幕した「東京ゲームショウ」。ビジネスデー初日から、会場は業界関係者やメディア、インフルエンサーの熱気に包まれていた。特筆すべきは、その規模と国際色だ。出展した企業・団体数は985に上り、過去最多を記録。44の国と地域が参加し、出展数の半数以上を海外勢が占める結果となった。
この背景には、海外ゲーム市場の拡大がある。主催団体によれば、2023年の世界市場規模は約29.5兆円に達し、ここ4年で約2倍という急成長を遂げている。さらに、米国で20年以上続いた世界最大級の見本市「E3」の終了に伴い、東京ゲームショウが世界的な商談とPRの場として重要性を増していることも要因の一つだ。かつて家庭用ゲーム機で世界を席巻し、その後もモバイルやeスポーツで歴史を刻んできた日本に、再び世界の視線が注がれている。
開発現場とハードウェアに浸透するAI技術
今年の会場で最も注目を集めたキーワードは、間違いなく「AI」との融合である。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、AIによる高度な画像処理機能を搭載した新型機「PlayStation 5 Pro」の実機を国内初公開した。AI技術を活用することで、キャラクターの素早い動きを滑らかかつ鮮明に描画できるという。また同社は、開発の裏側でもAI活用を進めており、品質管理テストの一部自動化によってバグの早期発見や業務効率化を図っている。
会場内に新設された「AIテクノロジー」コーナーも盛況だった。名古屋市のベンチャー企業は、AI音声合成技術を展示。これは大手メーカーの野球ゲームにおいて、実況音声を自動生成する機能として既に採用されており、ユーザーが設定した任意の名前でも滑らかに読み上げることが可能だという。同社の技術者である大浦圭一郎氏は、「AI技術は向上しており、聴き比べてもどちらが合成かわからないレベルに達している」と自信を見せる。
小規模開発における生成AIの功罪
生成AIをコンテンツ制作の主力に据える動きもある。東京のある社員わずか4人のベンチャー企業は、来春の発売を目指してサバイバルゲームを開発中だ。彼らは生成AIを活用することで、少人数ながら高精細な画像や躍動感ある動きの表現を実現している。
例えば、キャラクターの服装イメージをAIに伝えると、わずか30秒に1枚というペースでデザイン案が提示される。アイコン作成なども含め、ベテラン開発者の新清士氏は「生産性においてAIは圧倒的であり、開発コストを半減できている感覚がある」と語る。しかし同時に、著作権侵害のリスクには細心の注意を払っているという。学習データには権利関係がクリアなものを使用し、最終的なデザインが既存作品と酷似していないか、人間の目で厳重にチェックを行っている。新氏は「ゲームを面白くするのは最終的には人間であり、AIはあくまでアイデアを具現化するツール」と強調した。
大手企業を中心に、クリエイティブ領域での生成AI利用には依然として慎重論も根強い。しかし、コスト削減と効率化の波は確実に押し寄せており、業界全体がその活用法を模索し続けている。
海外で高まる「Total War」シリーズへの期待と憶測
日本の開発現場がAIという新たな「手段」に注目する一方、海外のストラテジーゲームファンの間では、ある人気シリーズの「次なる舞台」に関する情報が駆け巡っている。
1999年から続く歴史シミュレーションおよびファンタジー戦術ゲームの金字塔、「Total War(トータル・ウォー)」シリーズだ。開発元のCreative Assemblyは現在、シリーズ史上かつてないほどの長い沈黙を守っており、新作を待ちわびるファンの期待は高まる一方である。そんな中、有力なインサイダー情報が投下され、コミュニティが騒然としている。
「ウォーハンマー40K」参入説の信憑性
事の発端は、テーブルトークRPG「ウォーハンマー」界隈で知られるYouTuber、Valrak氏の発言だ。彼は自身の動画内で、Total Warの次回作がSF設定の「ウォーハンマー40,000(40K)」の世界観になることについて、「110パーセント確信している」と断言した。
Valrak氏はこれまでも同関連のリークで高い精度を誇ってきた人物であり、今回の発言も独自のネットワークから得た確度の高い情報に基づいていると見られる。タイミングとしても、Creative Assemblyは今年でシリーズ25周年を迎えており、12月4日には大規模な記念ライブストリーム配信を予定している。この配信が、過去を振り返るだけでなく、未来への布石となる可能性は極めて高い。
商業的な観点からも、この動きは理にかなっている。「Total War: Warhammer 3」の成功により、ファンタジー三部作は数百万本規模のセールスを記録した。Steamチャートを席巻したこの強力なパートナーシップをここで終わらせる手はないだろう。スペースマリーンやオルクといった人気勢力が存在する40Kの世界観は、巨大な市場ポテンシャルを秘めている。
開発における課題と未来への展望
しかし、Total Warが「40K」へ進出する場合、ゲームシステムの大幅な刷新が不可欠となる。従来のシリーズは歩兵、騎兵、大砲といった古典的な野戦を主軸としてきたが、40Kは自動小銃や戦車、軌道爆撃などが飛び交う未来戦だ。この根本的な違いをどうシステムに落とし込むかは、開発チームにとって過去最大の挑戦となるだろう。
国内ではAIによる制作プロセスの革新が進み、海外では人気フランチャイズが未踏のジャンルへ踏み出そうとしている。12月の発表、そして今後の技術革新が、30兆円市場をどのように変貌させるのか。ゲーム産業の進化は、まだまだ止まりそうにない。


